マール社 ミニ50年史

マール社のこれまでの出版物をふりかえる、ミニ50年史です。
(かなり絶版にはなっていますが、初期から現在まで発行を続けている本もたくさんあります!)

マール社最初の刊行物は『新かんてい流』(1975年4月1日発行)。屋外広告(看板)用に拡大トレースして使うデザイン文字セット(その頃「書体」と言いました)の本でした。この書体シリーズは次々種類を増やし、のちには約40書体もの大シリーズになりました。この時期は販促・広報印刷物の制作現場のニーズを徹底的に考え、専門的なプロの素材をだれもが自由に使えることを目標として、使いやすい工夫を随所に散りばめた本を企画しました。

作画のための写真資料「ポーズ2000」シリーズ、ラシネの名著の復刻再編集版『世界装飾図集成 全4巻』『世界の服飾 民族衣装』(上製版)、『やさしい人物画』『やさしい顔と手の描き方』など基本的なデッサン技法書、スクールカット集、年賀状カット集、などもすべてこの時期にはじまり、マール社の基幹ジャンルとなりました。特に年賀状カット集は毎年セットで発行し、マール社といえば「年賀状カット」と言われるほど、年末の定番商品として定着しました。

 

この時期「ポーズ2000」の後続「ポーズカタログ」シリーズ、コミック背景用の「背景カタログ」シリーズなどがスタートしました。コミックやイラスト制作現場で求められているものは何か、それをどのような形で提供すればよいか、など、作家さんの現場に取材しながら徹底的に研究し、作画の参考になりそうな資料を網羅的にカバーすることを目指しました。「マールカラー文庫」シリーズも廉価でコンパクトな資料提供の一環としてはじまりました。

この時期は、ずっと長く絵を勉強してきた人ではなく、リタイア後などに趣味で絵を始めた人を意識した絵画技法書を多数出版しました。「初心者の悩みに寄り添った本作り」「他のどんな本よりもわかりやすくかんたんに」をテーマに、どなたでも絵を描くことを心から楽しみ、そこから得られる喜びを分かち合えるようになることを目指しました。この頃発行した『暮らしの中の絵手紙教室』『はじめての絵手紙教室』はその後長らくこのジャンルの定番書となりました。『春の散歩道』も発売直後から好評をいただき、マール社のシーズンフェアの基幹となりました。

この時期はカットや装飾素材など品質にこだわったデジタル素材集を新たに多数企画・編集・発行しました。マール社初期に現場の利便性を追求しつつ発行していたアナログ素材を、時代の変化に応じてデジタルの形で提供するようになったともいえます。コミック・イラストジャンルでは、低年齢層初心者向けのわかりやすいコミック技法書を中心に発行しました。さらに『アート・オブ・ロバート・マッギニス』『アート・オブ・J. C. ライエンデッカー』など往年のイラストレーター大家の画集により、デジタル化が進むイラストの世界に対し、アナログ作品の本来の魅力をあらためて伝えることを試みました。

50年前に比べると、ポーズ集もコミック技法書もデッサン書も各社から発行されるようになりましたが、時代の変化に伴い新たに必要とされる資料はまだまだあると考え、今でも一冊一冊内容にこだわって、このジャンルの発行を続けています。さらに創作には、実技だけではなく、絵を描きたいと思うモチベーションや、オリジナリティある発想力も、同じくらい重要なのではないか…… そう考えたわたしたちは、世界観を広げ、既存の知識を別の視点で捉えなおして、新たなイメージが得られるような本の追求をはじめています。

2025年以降も、そんなマール社のラインナップを、お楽しみにお待ちください!